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万年B組ヒムケン先生終了に寄せて

万年B組ヒムケン先生が、番組改編のため3月末で放送終了になる。この番組はバナナマン・日村、バイきんぐ・小峠、三四郎・小宮が先生となって、強烈な個性を持つ一般人のB組生徒の夢を応援をする番組だ。私はこの番組が大好きだった。


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人をランク付けするのは下品だ。よくない。というのが常識とされながらも、多少の差はあれど誰しもスクールカーストというものを経験したと思う。この番組では、イケてる人々を"A組"と呼び、それに比べパッとせず冴えない人々を"B組"と呼ぶ。例えば、同じバナナマンでも設楽さんはA組だけど、日村さんはB組。かつて裏番組だったテラスハウスはA組。それに対して、万年B組ヒムケン先生はもちろんB組。社会で目立つのはいつもA組だ。虚構の世界であるドラマでさえ主役になるのはいつだって彼ら側の人間なのだ。だがこの番組ではあえてB組をカメラの中心に据える。その時、現実が虚構を越えるような、実に喜劇的な人間関係が映し出されるのだ。

登場する人物は様々だ。売れないヘヴィメタバンド、プロ野球選手を目指す少年、好きな人に振り向いてもらいたい女の子。様々な生徒が登場するが、ありふれた字面からは想像できない程の個性を持って輝いている。ライブ中に妹の魂が乗り移るバンドマンを見たことがあるか。秋葉原駅前でスライディングの練習をする野球少年はどうだろう。ヨーヨーの師匠がいる恋する乙女は?私は見たことなかったです。日本は広い。あまりにも不器用で、時に世間に誤解されてしまいそうな彼らが、この番組では主役として、活き活きとしながらも唯一無二の存在感を発揮している。そう、いつもスポットライトを浴びているお笑い芸人達はこの番組では脇役なのだ。彼らはいかに目立つか、というお笑い芸人における使命とも言えるものを捨てて、一般人である生徒の引き立て役に徹している。その様子に彼らの個性が現れていて、これもまた愛おしい。バナナマン日村はずば抜けた包容力で生徒達を全肯定する。バイきんぐ小峠は厳しくツッコミながらも不器用な優しさを見せ、三四郎小宮は持ち前の大人げのなさで先生というより友達のようで、生徒との化学反応を見せてくれる。


その中でも、特別好きな回がある。漫画家を目指す青年を応援する回だ。ボクシング漫画を描く青年には、密かに好意を寄せる女の子がいる。その子は同じ漫画同好会のメンバーで、既に漫画賞を受賞し、雑誌に漫画の掲載も決まっている。だが、対する青年は思うような結果が出ず、彼女と自身の間に開いてゆく差に葛藤していた。そんな中、彼女が一年間の海外留学に行ってしまうことを知る。彼はショックを受けるが、こう口にする。「自分は漫画からも恋愛からも真正面から向かうことを逃げてきた。せっかくテレビに出してもらえたんだから自分を180°変えたい。漫画も恋愛も全部、全力でやりたい。」 そして彼は女の子に告白することを決意する。ああ、とんでもないものを見てしまったと思った。青年とカメラという交わらないはずのものが偶然交わり、本来知り得ないような彼の青春の瞬間を私たちは目の当たりにしている。これを奇跡と呼ばずして何と呼ぼうか。その後の告白シーンは筆舌に尽くし難い素晴らしさがある。なかなか言い出すことができず、つい取り留めのない話をしてしまう青年。すごく、すごく、尊敬してます。ずっと喋りたいと思ってた。とたどたどしいながらも溢れるような思いをを紡ぎだす告白。いつもと違う雰囲気に妙な居心地の悪さを感じながらも、思いを受け止める女の子。このぎこちなく繊細なシーンをぶち壊すような三四郎小宮の存在も好きだ。彼の声や風貌はあまりにもコミック的で、この番組はドキュメントでもなくドラマでもなく、バラエティだということを感じさせる強制力がある。また、当初他の生徒が良かったと口走るような彼が誰よりも大喜びしてる様子には、二人の関係性の変化を感じさせられる。最後、先生が本気で感動して上手くコメント出来ていないのも微笑ましい。この番組ではやはり彼らはお笑い芸人ではなく、一先生なのだ。


こんなに書いても書き足りないくらいだ。何を言っても純粋に面白い。なんにも考えずに笑えるのがいい。そして心身共に疲れた週の半ばに観ると少しだけ元気が出る。この番組は学校というより、部活のような存在だった。なんとなく似たもの同士で集まって、なんとなく楽しくて、なんとなく居場所になる。そんなさり気ない存在だった。だからああ、もう私はこの飛びっきりおかしくて平和な世界を目にすることができないんだな、と思うとやっぱり寂しくなる。

最後に校歌を貼って終わろうと思う。そのくせ夢なら果てしない、っていう歌詞すごい良いなあ。あと二週間しかないけれど良かったらヒムケン先生見てください。アホらしいけれど、出てくる人々が皆真面目にやってるのが好きだ。それがまた面白いんだけど。一年間ありがとう、ヒムケン先生!