僕らのフェイバリットバンド、グミの解散に寄せて

どうしようもないくらいグミが好きだ。心底色んな人に聴いてほしいバンドだ。なのにこんなに早く解散してしまうのが悔しい。だって「ぼくたちホモサピエンス」なんてYouTubeで1.5万再生しかされていない。もっと色んな人に届くべきだ。私よりもっと届くべき人がいるはずだ。この歌は私みたいな人間の耳垢にまみれたイヤホンで響くよりも、クラスの隅で、アパートで、通学路で、漠然と不安を抱きながら過ごす青春の中で響くべき歌なんだ。自分にはどうにもできないけれどそう思ってしまう。

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グミは2013年に結成されたインディーズバンドだ。音楽性としてはなんというか落ち着いた銀杏BOYZみたいな感じ。好きなあの子への思いとか憂鬱な毎日への鬱憤、自己嫌悪をシンプルな演奏ながらもポップなメロディに載せて歌っている。

たぶんこれが彼らの一番の代表曲だ。グミの歌詞の魅力は突出したものがあると思う。

狂った季節の訪れ まちは煌めく 僕は靴もちゃんと履かないで
財布と鍵だけはもって いつもの道を歩いて行く

歌い出しから心をつかまれる。騒々しい蝉の鳴き声、不快にさえ感じる夏の蒸し暑さ。照りつけるような日差し。いつもよりぼんやりとした風景。そんな夏にだけ感じる独特の倦怠感。そんな感覚が伝わってくるような歌詞。もう最高。グミはこの曲だけじゃなくて、12時過ぎに起きた日のあのけだるい感じを歌ってくれるのがいいんですよね。

夏が過ぎるのは速いから 一瞬の魔法みたいだね
風にゆらゆらなびく髪の シャンプーの匂いが忘れらんないよ

曲が盛り上がるにつれて夏の暑苦しさから夏の爽やかさを感じる歌詞に変わっていく。その理由は君がいるからだ。"僕"の世界では恋という魔法が風を吹かせる。そしてPVのレッドブルは、風があの子に翼をくれたことの象徴だろう。夢のような空想的な歌詞が、僕にとって君が非現実的な存在であることを表している。魔法は好きなあの子を天使に変えてしまうのだ。

極めて写実的な歌詞と幻想的な歌詞が絶妙なバランスで織り交ざって、この曲の魅力を確かなものにしている。繊細で純粋な歌詞を引き立てるいわゆる"童貞ボイス"な声もいい。カラオケで女の子にキャーキャー言われてそうな歌い方のバンドより、こういう歌い方の方が断然好きだ。

そして私の一番好きな歌はこれだ。めちゃくちゃ良い。言葉にできないくらい良い。とびっきり楽しくて、苦しくなるほど切ない。青春がどんな音を鳴らすのかは分からないけれど、この曲が鳴らしているのは青春そのものだ。ぼくたちホモサピエンスという曲名も愛おしい。本能と衝動のまま音楽にあの子への思いをぶつける彼らにふさわしいタイトルだと思う。

「僕ならすべてを解決できるのに」
なんて口が裂ければ言えちゃうくらいにして
君のことなんてなんも知らないのに まだ

どうしようもない彼氏と付き合い、手首に傷をつくる"君"が抱える問題はきっと"僕"には想像できない程のものだ。だけど、あの子を何度も何度も思っているうちに全てを知ったつもりになってしまう。僕には君の連絡先さえも分からないけれど、君の絶望と苦しみが分かるのだ。僕なら君を助けてあげられるのに。そんな思春期によくある思い上がりをこの歌は歌っている。そして"僕"は"君"のことをずっと眺めているにも関わらず、曲の最後まで"君"は"僕"を見ることはない。それでもこの歌は君のことを"まだ"なにも知らないと歌うのだ。これからあの子と"僕"が偶然同じ教室にいるだけの関係から発展することはないだろうし、心を開いてくれることもないだろう。それでもすがるようにこれからを信じる"僕"の報われなさ、分かり合えなさにどうしようもなく惹かれてしまう。

僕は恋した 君に恋した だけどあいつが僕を追い越した
負けを散々思い知らされても まだ好きです アイウォンチュー
僕は恋した 君に恋した 過去に何度も別の恋もした
だけど何度もまたトキメク僕ら ホモサピエンス

こんなに苦しい現実を歌いながらも、恋する輝かしさがサビで爆発する。負け続けながらも好きを叫ぶその姿はあまりにも青春パンク的であり、銀杏BOYZ的だ。永遠だと確信していた恋も、時が経つにつれてその恋が刹那的なものだったことを知る。そして新しい恋に出会う度、この恋こそ終わりないものだと思い込んでしまう。そんな僕らホモサピエンスのある種滑稽な様を、彼らはとてつもなく美しくて尊いものとして歌っている。もうこれは全人類に対するラブソングと言っても過言ではないと思う。

ここまで色々書いてきたけどやっぱりグミが好きだ。ちょっと不完全なところもあるけど、そこも含めてこれからどう成長していくのだろうという気持ちにさせられるバンドだった。もっと彼らの曲が聴きたかった。グミは来月に初の全国流通盤シングルを発売する。楽しみだけど怖くもある。でも本人がまた会えるってコメントしているのだからまた会えるのだろう。それまで私たちはぼんやりと日々を過ごして行くしかないのだ。