今こそ黒猫チェルシーを聴いてほしい

火花に出ている渡辺大知、素晴らしすぎませんか。お陰で今、黒猫チェルシー熱が破茶滅茶に上がっている。渡辺大知語で形容するならば胸がピーチみたいになってしまっている。もうPEACH PUNK状態だ。そこで新アルバムの「LIFE IS A MIRACLE」を聴き込んでいるのだけどこれがまた良い。捨て曲はないし、彼らの独自性を活かしつつ様々なジャンルの音楽に挑戦している。


黒猫チェルシーで一番有名な曲はこれだと思う。10代ながら貫禄を感じさせる演奏と現代では珍しい硬派なガレージパンク。この曲のインパクトが強すぎるあまり、世間一般のイメージはここで止まってしまっている気がする。

そして今の彼らがこれだ。

別人かと思うくらい落ち着いた。ストレートなロックバラードにストレートな歌詞。時代に流されない彼らの魅力はそのままに、どこか懐かしさを感じさせるメロディを鳴らしている。シティポップが台頭している今、その懐かしさが新鮮だったりする。

ああ あなたが大好きで大好きでさよならしたんだ
ああ あなたが寂しくなったら
いつでも どこかの駅で 乗ってきてもいいからね

黒猫チェルシーの良さの一つにボーカル・渡辺大知の表現力がある。少し掠れた独特の歌声からは彼らが少年から大人に変わったことを感じさせる。そして伸びやかで力強い声の情報量の多さよ。歌詞はいささか凡庸かもしれないが、それを補って余りあるものがある。痛いほどの未練とささやかな決別、君を想う喜びと苦しみ、そんな相反する思いを表現しながらも、細やかな感情の色を変化させながら歌い切る。その声はあまりにも情動が詰まりすぎて、この人歌いながら死んじゃうんじゃないか、とさえ思わせられる。そしてその歌声にどうしようもなく圧倒されてしまうのだ。

この曲も黒猫チェルシーの良さが全面に出ている曲だ。最近知ったのだが、ナルトの主題歌にもなったらしい。こんないい曲幼い頃から聞かされるなんて児童の健全育成に良すぎる。羨ましい。

ゆっくりとした歌い出しから始まるこの曲は、情景を描きながら爆弾の導火線のように息を潜める。そしてサビに入ると感情が爆発する。

泣きたい泣きたい泣きたいくらいに
綺麗な月の下 歌を歌おう
どんなにくだらない世界だって 越えていくよ

失神しそうなくらいかっこいい。緻密なベースライン、昂るギターリフ、疾走感のあるメロディ。それら全てが爆発力を際立たせている。またクリープハイプが多用するような、普遍的な形容詞を連呼して気持ちを強調する手法もそれに拍車をかけている。彼らは成長して丸くなってしまった訳ではないのだ。がむしゃらに3分間に"かっこいい"を詰め込んでいた彼らは今、私たちが気付かないような隅々にまで計算を張り巡らせて音楽を作っている。それながらもわざとらしく退屈な音楽になってしまわず、きちんと衝動を歌いきるところに彼らの頭の良さが表れていると思う。

彼らをひとことで表わすならば「正統派」だろう。王道というのは常に馬鹿にされがちだ。ありきたりと揶揄され、個性を出す努力をしていないと言われてしまう。だが、本当に一番難しいのは王道の方だろう。あまりにライバルが多く、誤魔化しがきかない故にシビアに実力が問われてしまう。だがビートルズブルーハーツ、そんなロックスターと呼ばれる人々は得てして"王道"であるのだ。そして彼らは恥ずかしくなるくらい真正面から"ロック"に挑んでいる。そんな無謀な挑戦ができるのは、彼らの長年の努力で研ぎ澄まされた実力と才能のお陰だろう。

音楽ファンの心を掴み、一般ウケする実力がある。なおかつボーカル渡辺大知の知名度もある。俳優として出演した作品のタイアップができるというのは、普通のバンドにはできない大きな強みだ。十分すぎるほど彼らがブレイクする条件は揃っている。早くMステや紅白で私たちに本物のロックを見せてくれ、黒猫チェルシー